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韓国画と東洋画と

会期:2022年 6月3日(金)- 6月26日(日) 13:00-19:00

会期中の金土日開廊

参加アーティスト:クォン・ヘソン、キム・ヘスク、イ・イェジン、イ・ウンジ、イ・ヒウク、ヤン・ユヨン、チェ・カヨン、チェ・スリョン

企画:紺野優希

venue:FINCH ARTS


この度FINCH ARTSでは紺野優希キュレーション「韓国画と東洋画と」を開催いたします。


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韓国の現代東洋画を論じるには、それが二重三重にも捩れている点を捉える必要がある。一つ目は、ファインアートと民俗画。二つ目は過去と現在、そして三つ目は日本と韓国である。書画の切り離しのように、美術という言葉が用いられはじめ、実用性と鑑賞対象に価値の基準が振り分けられた。これらは時代を経ながら、さらに絡み合ってくる。西洋から抽象表現主義などの最新の動向が輸入されたことで、東洋画(日本画/韓国画)は美術史上でアップデートを求められてきた。また一方で、国粋主義や革新を志向する上で、それらは政治的な介入を受けたり、道具として活用された。


西洋対東洋の構図で考えるよりも遥かに、日本と韓国は密接に関わってきた。一つ目と二つ目は、韓国という場において日本の領土的/政治的介入によってはじまった。20世紀を迎えて間も無く日本(大日本帝国)の植民地となった朝鮮半島では、公募展の審査基準、留学先の日本における美術の動向など、アーティストの活動に影響を及ぼしていた。そして日本の終戦(敗戦)、韓国からすれば「解放」を迎えた以降も、三つの捩れは解消されることなく、続いている。「解放」後、絵画における「日本」らしい表現(郷土色や倭色)の清算、先進性への高まりによって掲げられた抽象表現=東洋の精神、墨の黒さではなく色彩感としての民族性の探求、ソウル・オリンピックという舞台を前にして掲げられた「現代性」、そしてグローバル化の最中のアプロプリエーション。激動の近代期から今日にかけてまで、三つの捩れは「韓国画」とも「東洋画」ともジャンル分けすることが難しい韓国画/東洋画の現状を表しているだろう。


本展には8名のアーティストが参加する。8名は、近年韓国内で精力的に活動している「画家」である。東洋画/韓国画を専攻した者もいれば、西洋画を専攻した者もいる。壯紙に描かれた作品もあれば、アクリルで描かれた作品もある。(作品や作風の紹介は、下に続く参加アーティストの情報を参考にしていただきたい。)ここで「画家」たちは、(先に述べたような)過去これまで「東洋画」や「韓国画」というカテゴリーに負わされていた使命から解放されている。だからと言って、「西洋の韓国的解釈」や「過去の現代化」という見た目ばかりの追従(=アプロプリエーション)とも距離をとっている。出展作の中には、一見すると、モダニズム絵画にも見えたり、単なる引用や借用に見えるものもある。しかし、これまで東洋や国家主義、さらには東西の融合=現代性などのアイデンティティを背負わされた歴史を踏まえると、出展作は東洋画/韓国画を規定する枠を越えようとしていると言えないか。それだけでなく、その枠を再検討する試みとして、評価できないだろうか。


企画展のタイトル『韓国画と東洋画と』の後に続く単語は、「西洋美術」かもしれない。もしくは、「抽象」や「具象」、「起源」や「特異性/オリジナリティ」かもしれない。または、支配していた「日本」や先進国入りを目指した「大韓民国」かもしれない。韓国画と東洋画を同一視するのではなく、広い視座から考えられるように、もう一つの軸を掲げること。そうすることで、韓国画と東洋画を分かつ起点は勿論のこと、日本や西洋、国家と個人(アーティスト)との歴史的・社会的・政治的関わり方の中で、見えてくるものがあるだろう。最終的には、単なる「融合」や「ミックス」に落ち着くことなく、定義して/されてきた「韓国画/東洋画」と(いう枠組み)の別れを告げることにも繋がるだろう。(紺野優希)


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紺野優希/콘노 유키(Yuki Konno)

韓国と日本で美術展を見て、文章を書いています。

企画展『アフター・アフター・10.12』(ジョン・ユジン、杉本憲相、Audio Visual Pavilion、韓国ソウル)、ソウル・フォトフェスティバル『素敵な新世界』、特別企画展『Walking, Jumping, Speaking, Writing. 境界を、 ソウルを、 世界を、 次元を. 경계를, 시간을, 세계를, 차원을. 신체는, 링크는, 언어는, 형태는.』(SeMA Storage、韓国ソウル、2018)、『新生空間展: 2010年代の新しい韓国現代美術』(カオス*ラウンジ五反田アトリエ、2019)、『韓国からの8人』(パープルームギャラリー、2019)、パク・ジヘ個展『Lepidoptera』(FINCH ARTS、2021)、『HOI-POI:Korean & Japanese Contemporary Painters』(FINCH ARTS、SPACE Four One Three、2021)などの展示を企画・共同企画・企画協力した。GRAVITY EFFECT 2019 美術批評コンテスト次席。。


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クォン・ヘソン(권혜성/Kwon Hye Seong)

1985年生まれ 

Hongik University 絵画専攻 卒業 Instagram:@oiji_works

「晩秋の肌寒い日、西北から吹く風」145 x 75cm 壯紙にコンテ 2019


個展

2020 <Back Beat!>, Space Willing &Dealing, Seoul, Korea


出展作の「晩秋の肌寒い日、西北から吹く風」(2019)は、済州島の丘(오름:寄生火山)から風を見て描いたものです。済州島は一年中風がよく吹いて、その日も全身で風を感じながら過ごしていました。丘に登ると、風に吹かれるススキが見えました。その様子を絵に描きたいと思いました。暗くてじめじめした、でも暖かな風が吹く風景を表現しました。西北から吹く風のことを、済州島の方言で「ソタニパルン(섯하니바름)」と言うそうです。


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キム・ヘスク(김혜숙 / Kim Hyesook)

1981年生まれ 

Sejong University, Music, Fine Arts and Physical Education 大学院 絵画専攻 修了


「Curve」72.7x53.3cm 壯紙にシャープペン、墨、彩色 2021


個展

2021 <Frame>, ART SPACE BOAN 1, Seoul, Korea

2018 <knock, knock>, KSD Gallery, Seoul, Korea

2018 <knock, knock>, The Cheong-ju Art Studio, Cheong-ju, Korea

2017 <vacancy>, Art & Culture Space Yeoinsuk, Gunsan, Korea


グループ展

2022 <PENCILISM>, Gallery MEME, Seoul, Korea

2021 <The Enigma of a Day>, A BUNKER, Seoul, Korea

2021 <PLANARIA>, Platform mortar, Goyang, Korea

2021 <Caress and Graze>, Fine Paper Gallery, Seoul, Korea

2019 <INTER-VAL, INTER-VIEW>, Tri-bowl, Incheon, Korea

2019 <Double Consciousness>, OUTHOUSE, Seoul, Korea

2019 <Sender Inquiry>, The Cheong-ju Art Studio, Cheongju, Korea

ほか多数


空間がいかに時間を可視化できるか、探求しています。通過性の高い薄い紙にシャープペンで細く描き、絵の具を薄く重ねることで、視覚的なリズムを作り出します。同時に、空間に積み重ねられた時間を見出そうとする過程でもあります。


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ヤン・ユヨン(양유연/Yooyun Yang)

1985年生まれ

Sungshin Women's University 大学院 東洋画専攻 修了

Instagram:@yangyooyun


「Black Curtain」各53 x 45cm 壯紙にアクリル絵具 2021


個展

2019 <I know the day will come>, Amado Art Space, Seoul, Korea

2016 <distrust and overtrust>, Gallerylux,, Seoul, Korea

2014 <They (I, You, He, and We) Cry>, OCI Museum of Art, Seoul, Korea

2013 <The full night>, GalleryBundo, Deagu, Korea

2012 <Daydream>, Gallery SoSo, Heyri Art valley, Korea


グループ展

2021 <The 8th Chongkundang Yesuljisang>, SEJONG CENTER Sejong Museum of Art 1, Seoul, Korea

2021 <Songs Without Words>, Gallery SoSo, Heyri Art valley, Seoul, Korea

2019 <The Adventures of Korean Painting: I Will Go Away All By Myself>, National Museum of Modern and Contemporary Art, Cheongju, Korea

ほか多数


 他人と共有しきれない感情に由来する、究極的な孤独を根拠づける不確実な世界と、信頼を寄せられない対象に注目している。

 一瞬のうちに通り過ぎ去った場面を捉えて画面に描き出したり、その瞬間の感情を最大限表現しようと試みている。

 ある一人の暮らしが自然と創作物に映し出されるように、日常で見て感じたことを描き続けている。


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イ・イェジン(이예진/Yejin Lee)

1993年生まれ 

Sungshin Women's University 大学院 東洋画専攻 修了

Instagram:@yo.zi_


「Bohol」116.8 x 91.0cm 壯紙(5枚重ね)に彩色 2018


グループ展 2020 <수족관(水族館)>, WWW SPACE, Seoul, Korea 2020 <A Little Forest>, Nella Foresta x Public Gallery, Uiwang, Korea 緑の自然を重ね、自然の中の数多くの色を用いて制作しています。


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イ・ウンジ(이은지/Leeeunji)

1989年生まれ

Ewha Womans University 大学院 東洋画専攻 修了

ホームページ:https://leeeunji-eunjilee.com

Instagram:@leeeunji._

<Creeper>, 2020, Keep in Touch, Seoul, Korea 会場記録


個展 2020 <Creeper>, Keep in Touch, Seoul, Korea 2019 <Breath-holding>, Seoul Art Space Seogyo, Seoul, Korea グループ展 2021 <Cloud Shadow>, Seongbuk Young Art Space, Seoul, Korea 2020 <cut! cut! cut! — index>, Alltimespace, Seoul, Korea 2019 <PERFORM 2019: Linkin-out>, Ilmin Museum of Art, Seoul, Korea 2019 <When Dijiang Dances>, Gallery 175/ Jungganjijeom, Seoul, Korea スペース運営 2018年〜:中間地点(jungganjijeom.com) 普段歩いている場所の風景を、昔からよく描いていた。それは、自分自身の規模に合わせて外の世界を眺めたいという気持ちがあったからだと思う。急速に過ぎ去ることの中から、自分のスピードに合わせて見ることができるものを、規模やサイズに合わせて描く。瞬間は私の行動よりも早く通りすぎ、掴み取ったところで、それは朧げなままだ。それでも、1つ1つが今を語る彫刻的な/破片的な(=조각적)絵画になることを信じて、制作している。 散らばっていながらも集合している作品は、直観的ではあるものの、プロセスが重要である。一つのテーマとして、一種類として、または多彩な画面が集まり、一つの平面として展開され、互いに支え合う立体的な構造の画帖として、小さなかけらに多角的な視線が集まり、そして散らばる。それは、異なる印象を人それぞれに与える隙間に満ち溢れた、朧げで曖昧な塊として作り出される——まるで、絵に残された余白が、説明のない具体性をそれぞれに思い起こさせるように。 その昔、書画の余白に題跋(作品の末尾に作者や第3者によって残された記録)が用いられたように、私の観点が込められた作品もまた、別の誰かに解釈されて、説明を補足される。印象の隙間を残すことで、私の作品は個人的でありながらも同時に、共同の話が込められる関係的なものになることを願っている。 企画展『韓国画と 東洋画と』の出展作「蔓///実行.立てかける.相互(Creeper/Climber///exhales.sponge.restless)」は、一瞬の内に過ぎ去った「蔓」の印象を、ロードビューで10年間たどり、12の姿で描いたものである。制作は、1枚の紙を一つの瞬間と捉え、複数の紙で貼り合わせることからはじめられた。貼り合わせたものを過去から現在の順に一枚ずつ剥がし、現在に近づくにつれて以前の痕跡が折り重なる。いくつもの時のかけらは、一つの塊(画帖)にもなり、会場という空間では可変的に展開され、また少し違う印象を与える「蔓」となる。


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イ・ヒウク(이희욱/Yi Huiwook)

1981年生まれ

Kookmin University 大学院 美術学科 絵画課程 修了

Instagram:@trotsky1917


「鏡-image」72.7 x 60.6cm リネンに油絵具 2021


個展

2021 <ecce homo>, A-Lounge

2017 <些細なものの宴(대수롭지 않은 것들의 잔치)>, Hwangumhyang, Seoul, Korea


グループ展

2019 <LIMEN:interspace>, Insa Art Space

2018 <ふたつの今日(두 개의 오늘)>, weekend 2/w,

ほか多数


今回の出展作は、昨今の韓日関係への問いかけから始まりました。ここ数年、韓日関係は政治的に冷えきっています。内々の政治問題を解決したり、ポピュリズムに傾いた政権を結束させようと、両国の関係は政治的に活用されました。それによって、両国の「国民」は非常に排他的な関係に置かれることになりました。「鏡-image」は、そのような民族主義的排他性に対するアンチテーゼです。この絵には、モデルの意見がたくさん反映されています。以前にもモデルを呼んで(ほとんど知人ですが)描いたことがありました。今回の制作にあたって、これまでの作品の主なテーマであった鏡を、今回も使ったらどうかと言われました。冬と空の色合いが一度に、二つの空間として現れることで魅力が増すと言われました。私としても、関係のアレゴリーとして働くことを望んだので、鏡を用いました。


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チェ・カヨン(최가영/Kayoung Choi)

1989年生まれ

Seoul National University 大学院 東洋画専攻 修士

Instagram:@studio_kayoung


「セルビアの山-Marija Curkから」2020, キャンバスにアクリル絵具, 262 x 262 x 5 cm(計6点), 会場記録(2020, Art Space Hyeong, Seoul, Korea)


個展 2022 <Survival in Fantasy>, Kumho Museum of Art, Seoul, Korea 2020 <A Serbian Mountain, a Quarry, Venčac>, Art Space Hyeong, Seoul, Korea 2019 <Stay by My Side>, Do-So Artist Residency, Fujiyoshida, Japan 2019 <The Shadows of the Unseen>, Dongduk Art Gallery, Seoul, Korea 2019 <Finding a Slice of Rainbow>, Gallery Doll, Seoul, Korea 2018 <All Alright>, Government Complex Seoul, Seoul, Korea 2017 <Found>, Gallery DOS, Seoul, Korea 2014 <Canned Landscape>, Samkaup úrval Ólafsfirði, Ólafsfjörður, Iceland 現実と理想の関係を表現し、絵画で経験することを探究している。写真や映像、文章といった他者の記録から、立ち入れない時空間の臨場感を想像し、写生するように描いて展示会場に演出を試みる。


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チェ・スリョン(최수련/CHOE Sooryeon)

1986年生まれ 

Hongik University 絵画専攻 修了

Seoul National University 大学院 西洋画科 修了

Email:sooryeonchoe@gmail.com

Instagram:@choesooryeon


「泰平女」145 x 112cm リネンに油絵具 2020


個展

2020 <霧中筆寫>, Sansumunhwa, Seoul, Korea

2020 <Pictures for Use and Pleasure>, Incheon Art Platform, Window Gallery, Incheon, Korea2019 <Music from a Decaying Country>, The Cheong-ju Art Studio, Cheongju, Korea

2018 <Music from a Decaying Country>, O'NEWWALL E'JUHEON, Seoul, Korea


今日表象される東洋風なイメージの様相や、消費の仕方に興味がある。近代化以降、韓国社会では「東洋的な」ものは、廃れて奇妙なものとして受け入れられた。東洋的なものを疑いながらも、覆い隠し、好み、その効用を今一度模索する。東北アジアが共有している伝統的なクリシェとイメージをもとに、悲哀や女性、現実との乖離、内面化されたオリエンタリズム、疑念、無知と不条理を描いている。


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企画展「韓国画と東洋画と」小冊子を制作中です。

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展示記録


撮影:前谷開

撮影日:2022年6月5日

©︎Artists, Photo by Kai Maetani, Courtesy of FINCH ARTS














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