西村有未「絵⇄それらを生む物語の態度」
- FINCH ARTS
- 8月30日
- 読了時間: 3分
更新日:10月12日

西村有未「絵⇄それらを生む物語の態度」
会期|2025年9月9日(火)- 10月2日(木)
会場|半兵衛麸五条ビル2F ホールkeiryu 〒605-0901 京都府京都市東山区朱雀町421-2
休廊日|水曜日
開場時間|10:00-17:00
主催|FINCH ARTS
アーティスト|西村有未(にしむら・ゆみ)
このたびFINCH ARTSでは、2025年9月9日(火)から10月2日(木)まで、西村有未の個展を開催いたします。どうぞご高覧ください。
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往来により発酵される何か
近年、私はモチーフである「図形的登場人物」(※1)を呼び水として絵を描いてきた。目指すのは、「そこに何かがいて、何かが起こっていることはわかる。けれども結論としてそれが何なのかは釈然としない」という、出来事以上物語未満の(線になりかけてなお点にとどまるような)絵である。
つまり、私にとって制作の目的は「物語の挿絵」を描くことではない。
出発点こそ「図形的登場人物」(※2)だが、やがて画面上の絵肌や画材の振る舞いに導かれて逸脱し、新たな姿へと変容していく。この営みは常にゴールが見えず、不安を伴う(※3)。これまで私はその不安を絵の内部だけで抱え、解決しようとしてきた。しかし、自家中毒のような行き詰まりを覚えたため、意識を分散させるための“対抗馬”を別媒体に用意した。
その対抗馬とは、図形的登場人物を生む「物語の態度」(※4)そのものを、擬人化ならぬ擬物化した作品である。本展では絵画と並行してそれらを提示する。
双方を行き来する制作は、綱引きのような緊張を孕みつつ、やがて互いを支える関係を生んだ。そして、この往来のなかで、私の中で何かが発酵していく感覚が確かにあった。以上のことから、今回の試みより得た感覚が、次なる絵の展開を呼び込む契機になると考えている。
※1 「図形的登場人物」とは…物語(昔話)のシステムが話の展開を優先するあまり、感情や身体の描写を省かれた登場人物のこと。
参考文献:マックス・リュティ『ヨーロッパの昔話 その形と本質』小澤俊夫訳、岩波書店、2017 年
※2 本展の出発点は『犬石物語』に登場する犬であるため、ここでは本来は「図形的登場犬」と呼ぶべきだろう。
※3 無論、この種の制作上の不安は、作り手なら誰しも抱えるものである。
※4 昔話は話の展開を優先するあまり、登場人物の感情や身体性を省略して進んでいく。だからこそ、「図形的登場人物」が誕生する。このときに働いている「個よりも全体を先立たせる態度」を、私は「物語の態度」と呼んでいる。
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西村有未 略歴
2019年京都市立芸術大学大学院 美術研究科博士(後期)課程 美術専攻研究領域(油画)修了。近年の主な展覧会に「岸む音/際の上」(尾道市立大学美術館, 広島, 2024) 、「犬石物語(I still live there)」(FINCH ARTS, 京都, 2023)、「Kyoto Art for Tomorrow 2022 -京都府新鋭選抜展-」(京都文化博物館, 京都, 2022)、「絵画の見かた reprise」(√k Contemporary, 東京, 2021)、「Encounters in Parallel」(ANB Tokyo, 東京, 2021)、「第3回CAF賞」(3331 Arts Chiyoda, 東京, 2017, 審査員賞「保坂健二朗賞」受賞)など。コレクションに、高橋龍太郎コレクション, KANKURO UESHIMA COLLECTION, 山梨学院大学

展示記録
撮影:岡はるか ©︎Yumi Nishimura, Photo by Haruka Oka, Courtesy of FINCH ARTS





















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